ONE VOICE

     * ONE LOVE + ONE LIFE + ONE VOICE *        笑っていれば、イイコトあるよ  

Fiarness NBAの惨劇

■Roddick def. Coria 7-6(4)6-3

スポーツを見ていて時々泣きたくなるくらい切なくなるのは、そこに必ず敗者がいるからだったりする。どんな試合でも、そこには勝つか負けるかしかの選択肢しかない。誰もがみんな勝ちたくて、それでも誰かしか勝つことが許されないフィールド。そこでは多分、叶った夢より、散った夢の数のほうが圧倒的に多い。けれど可能性はいつだって公平だ。フィールドに出てきさえすれば、誰にだって夢を見る権利がある。

今日のTMCの第一試合は、Hewittが勝者となり、SFへの進出を決めた。GR王者のGaudioを相手に、6-2 6-1と圧倒的な強さを見せ付けた一戦だった。RR最終戦を前に、この試合のハイライトがESPNで流れたのだが、ひとり、「見返す価値のない酷い試合。GaudioはHewitt相手に何もできずに終わってしまった。非常につまらない試合だった。よかったことは、試合自体が短かったこと」とのたまった。前回のFederer戦の時も、Gaudioをけなしては、私をイラつかせていたコメンテーターだった。一体全体彼女は何万人の観客の前で黄色のボールをあっちこっち追っかけては泣いたり笑ったりする選手を何だと思っているのだろう? タイトでなくたって一試合は一試合だ。見返す価値のない試合などと、Gaudioに失礼だし、いいプレイをして勝利を手にしたHewittに失礼ではないだろうか。テニスには詳しくなくても、彼女以上にテニスを愛しているファンは、世界中にゴマンといる。Hewittのファンは、Hewittのパフォーマンスに笑い、Gaudioの努力を讃えただろう。Gaudioのファンは、Gaudioを次への期待をこめて労い、Hewittの掴んだ勝利に、拍手を送ったに違いない。そして“非常につまらない試合”の裏に隠された多くの裏方の苦労も、その拍手に報われるだろうと思う。毒舌であることと、無感動であることとは違う。彼女は面白い試合でないとスポーツとしての感動を覚えないタチなのだろうと、即席Gaudioファンは静かに思ったりしたわけだった。

NBA。Pistonsのホームで、対Pancersの試合だった。PancersのArtest選手がちょっと酷いファールを犯して、それに怒ったWallenceの選手がArtestの顔面を突き飛ばしたのがそもそもの発端だった。ここまではNBAではよくあることだろう。テニスでラケットを虐待したり、野球でデッドボールに怒ったりするのと同じだと思う。これに怒ったのはPancersのチームメイト達で、当のArtestはスコアラーテーブルの上に寝そべって、我関せずそのもの。ところが騒ぎが静まってきた頃になって、冷静を貫いていたArtestをビール入りのカップが直撃。スタンドにいたファンが投げたものだった。これで思い切り頭に血が上った彼は、スタンドを駆け上がる。彼を追って選手や役員もスタンドを登る。止めようとする人もいれば、ポップコーンや飲み物を顔面にぶちまけるファンもいる。子供が泣き出す。椅子が飛んでくる。フロアにまで観客がいる。思わずパンチを繰り出す。それを助太刀するほかの選手、止めようとする役員、誰も聞いてなどいない放送で暴動を鎮めようとする監督。もうメチャメチャだ。あとたったの45秒で終わるはずだった試合は、そこで打ち切りにされ、選手はロッカールームへ誘導された。氷は投げられるわビールはブッかけられるわポップコーンなんかまだいいほうで、ペットボトルが頭を直撃していた選手もいた。

アウェー、何千人もの観客の前、ブーイングを受けてプレーするだけで、神経が高ぶってしまうと思うのだけど、そんな中でファールして乱闘になって、必死になって平静を装っている選手に、ものを投げるというのは絶対にフェアじゃないと思う。確かにスタンドに殴りこんでいったのはやりすぎかもしれないけれど、試合の途中なのだから、闘争心が煽られていて当然だし、選手に物を投げないという一線を越えたのは、明らかにファンが先だった。日本にいたときはブーイングなんてあまり聞かなかったし、相手をけなして贔屓チームを応援するのは品が悪いと思っていた。アメリカではこれは文化なのか何なのか知らないけど、ごく一般的なこととして行われている。でもそれはフェアじゃない。それはスポーツじゃないと思う。

巻き込まれて怪我をされたファンの皆様の一日も早い回復を願います。