ONE VOICE

     * ONE LOVE + ONE LIFE + ONE VOICE *        笑っていれば、イイコトあるよ  

Gone Baby Gone

gone baby gone

Starring: Casey Affleck, Ed Harris, Morgan Freeman
Directed by: Ben Affleck

映画が終わった途端、一番前に座っていたおばさんたちが喚き始めた。
「最悪の映画よ、なにコレ。こんな終わり方なんてありえない」
連れ立って来ていた他のおばさんたちが力強く頷く。その2列くらい後ろに座っていた女の子たちが唱和する。
「私もそう思ったの。こんなのってないわよね。酷い映画だわ」
おばさんとその女の子たちはエンドロールの半ばくらいまで立ち話をして、「友達には10ドル捨てることになるから、絶対に見ちゃだめよって言わなくちゃ」という結論が出たところで、散会していった。

誰でもいいから同意を求めたくなる映画です。
自分ひとりだけで、納得して映画館を出るっていうのは、絶対に無理だと思う。
終わった瞬間、誰かと話したくなる。
きっと自分は間違ってないことを証明したくなる。
私は終わってから、ず~っと椅子に座って、そのあとトイレに10分くらい篭ってから、音楽も流さずに高速を飛ばして、寮に戻ってきて、とりあえずPCの電源を入れました。
想うことが、とてもたくさんある。
酷いエンディングで、きっと間違いない。
けれど、映画それ自体が酷いわけじゃないと思うんだ。

最後の間がね、長いんだよ。絶対にわざとなの。
嫌な奴だなBen Affleck
でもよくできてる映画だった。
GoodかBadかで聞かれたら、人によって好みは分かれるんだろうな。
でもInterestingかどうかで聞かれたら、Interestingで間違いないよ。

映画の全てを通して問いかけられる数多の質問に、答えられる必要はないと思う。
人の数だけ正論がある。
けれど考えなくちゃいけないと思うんだ。
自分だったら、どうなんだ?

不安になるから、話し出す。

Ben Affleckが狙っていたものは、まさに「終わった直後に話し出す観客たち」なのだと、とてもよく分かる。そしてそれは、確実に達成された。

I say, go waste your 10 bucks.
10ドル、捨てるだけの価値があるよ。

A

*以下、長い余談*

単純にね、Caseyが見たかったんだよね。暇だったし、やることもないので、映画にでも行こうかな、と思って映画館に行ったらやっていたから、「おーラッキー」と思って、軽い気持ちで見たんです。Benが脚本+監督だってことは知らなかったの。最初のクレジットで知って、わくわくした。MattとBenには甘いんです。二人とも好きだから。でもCaseyが出てるということしか知らなかったし、それだけを目的に行ったから、話の流れもぜんぜん知らなかったし、話のトーンすらも分かってなかった。でも話の流れに逆らわず、ただのスリラーだと思って見とくのがいいよ。それでも十分楽しめる。そして最後に良くも悪くも打撃を喰らえばいいんだ。

Caseyは期待通りでした。いや、期待以上でした。やっぱうまい。すごい。役者としては、確実にお兄ちゃんより私は好きだ。(Good Will Huntingでも好きだったんだよな~。ずいぶん昔だし、せりふもなかったけど、好きだった。どうでもいいっちゃどうでもいいけど、I swallowed a bugは傑作でしょ。初めてWillとSkylerが出会うシーン。二人に気を利かせて席をはずす時にCaseyが言ったセリフ。まったくのアドリブ。よってMattのその後の最高の笑顔は素。)

今回のキャスティングは、どういう成り行きでそうなったのかは分からないけど、彼以上のPatrickはいないよ。断言できる。だって彼がもうやりきってしまったから。とても分かりやすいんだよね。とても理解しやすい。それはCaseyの力量でもあると思うし、脚本の素晴らしさでもあると思う。

ここまで全部言っちゃう社会映画も珍しいよね。最近の流行で行くと、この人はなんとなくこういう考えで、この人はなんとなくこんな考え方で、この二人は相反していて、みたいな映画が多いじゃない? それもいいと思うんだけど、Gone Baby Goneを見ちゃうと、それって中途半端なんだな、と思う。セリフの量が多くてさ、すごいんだよ。みんなベラッベラしゃべるからね。曖昧じゃなくて、くっきりはっきりなんだ。立場も考え方も、動かせないくらいに確立してしまうの。俺はこう思う。俺は間違ってない。みたいな。でも確かにみんな正しい。少なくとも誰も何も間違ってない。全ての口論のどれもこれもが、正論なの。よく書けてるんだよ。ホントに。キャラクターのどこにも無理がなくて。この人だったら、こうだろうって、残念なくらいによく分かる。普通に考えたらやりすぎなんだ。観客に任せる部分が全然なくなっちゃうから。でも「10ドル捨てること」によって、むしろ全てが見てる側に丸投げされてくるんだよ。覚悟しといたほうがいいよ。

結果としては、最悪なんだよ。それは間違いないんだ。多分。
でも彼の決断は、間違ってなかったと、私は思うんだ。多分。
一人で見て、よかったと思うんだよね。
最終的に彼は正しかった、と思ってる私は、多分最高におもしろい人だからさ。
女友達と一緒に見に行っていたら特に、何も言えずに家に着いたと思うんだよね。
そういう意味で、やっぱり脚本がとてもよくできてると思うんだけど。
でも私は、彼の正しさが、この物語の果てに、いつか、証明されたらいい、といつまでも思っていると思う。
彼と同じくらいの強さで、間違っていなかったと祈りたい。

「何が幸せかなんて、そんなことは本人が決めることだ。」
そんな御託が通用しない、その瞬間の映画。

*どうでもいいけど*
BenとCaseyってあんまり似てないなとか前トチ狂ったことを思ってたけど、いや~、やっぱ兄弟なんだよね。そっくりだね。何度か、え、監督、出演もすんの?と思ったシーンがあったよ。角度によって、相当似てる。そして声がまるで同じ。

Ed Harris、カッコよすぎる(陶酔)。

Morgan Freemanはすげぇ。とにかくすげぇ。

2nd Assistant Directorが日本人だったよ。すごいな。かっこいいな。


パチパチする