ONE VOICE

     * ONE LOVE + ONE LIFE + ONE VOICE *        笑っていれば、イイコトあるよ  

Awake

右目の下まぶたが何故だか腫れてしまって痛い。
珍しくメガネで一日を過ごしてみる。
そういえばコンタクトを買いに行かなくては。

ふと何もかもを見失ってみたくて
帰り道に眼鏡を外してT-シャツに掛けてみた。
見えている。
けれど何も分からない。
水たまりと
段差と
道のでこぼこがまるで同じに見えて、
私はひとり、
横断歩道に大げさな一歩を踏み出す。

電車に乗っては、何も理解できない
取り残された自分。
目の前に立っている人の顔もきちんと見分けられない自分。
突然どうしようもなく自分は醜い気がして
うつむいたままずっと自分の指先を見つめていた。
自分ばかりが酷くくっきりと見える気がする。

地上に向けて階段を上る。
3段前を昇る人の靴の形も分からない。
それはとても緑色で
とてもぼんやりしていた。

知っている道を
いつもと同じように家へ向かう。
10月のNYは、秋という言葉を忘れたように寒くなった。
風は吹きつけて
吹き去っていく。
もう一年は
終ってしまう。

失われたVisibilityの中で
とおく、とおくを見つめてみる。

遠近感すら失われた世界に
輝くのは、ひかり。

滲むようにまぁるく視界に描かれるいくつものひかり。

行ったことのない花火大会の夜空は
きっとこんな感じだ。

いくど目を閉じても
あやふやであいまいなひかりは
瞬きを繰り返し
けれど消えずにそこにあり続ける。
夜が明けるまで。

夜が明けるまで。

Music: Josh Groban - Awake