ONE VOICE

     * ONE LOVE + ONE LIFE + ONE VOICE *        笑っていれば、イイコトあるよ  

Expired

今月末日本の本社からNYに研修にこられるはずだった方が、
昨夜事故でお亡くなりになられたとメールがあった。

もう会えなくなった。

人は思い出したようにいなくなる。

2年前私はCassieと一緒に朝からバイトをしているはずで、
来ない彼女を不思議に思いながらも
忙しさの片手間に、電話を取った。
受話器をを耳と肩にはさみながら
彼女の母親の声を聞いた私はとんだ馬鹿で間抜けで、
気の聞いた言葉の一つ言えないまま受話器を元に戻して
順番を待っていた生徒さんに"How can I help you?"と笑顔で言った。
お前はとんでもない阿呆だ。

実家の隣の家の幼馴染が亡くなってしまった時は
Cassieはまだ生きていて、
一緒に行った韓国料理からの帰りの車の助手席に乗っていた。
ケータイに届いた父からのメールはローマ字で書かれていて、
意味は分かるのに、何を言っているんだろうこの人は、と思いながら
車の中の会話に普通に参加して楽しい夜を過ごしていた。
もう逃げられなくなって、家に帰り着いて、
今までの人生で一番かけたくない電話をかけた。
父は「お母さん、泣いてたよ。」と言いながら、自分が泣きそうだった。
仕事に出ていた母のケータイに電話をかける。
仕事中に電話をしたのも、ケータイに電話をしたのも
後にも先にもこの時だけだ。
母に泣かれると私は弱い。
彼女が泣くから、私も泣いた。

アメリカに来て一ヶ月たったあたりで
母からメールが来ていて、なんだか様子がおかしかったので電話をしたら
飼っていた犬が「死んじゃったよ。」と言われた。
小学校1年生の時にうちに来た臆病で怖がりでその癖に生意気なオスで、
私は彼がうちに来てから、自分のことをずっと「おねいちゃん」と呼んでいた。
洗面所の中でバスタオルに篭って泣いて、
でもアポイントメントがあったんだと思い出してオフィスまで行って、
大学に受かったよ、おめでとう
と言われた。
帰り道にもっと泣いた。
弟は死んだ。


天国まで駆け登って行って、
扉を蹴り開けて、
神殿を走り抜けて、
神様の肩を張り飛ばして、
指を突きつけて、
罵り倒してやれたら。

なんで。

どうして。