ONE VOICE

     * ONE LOVE + ONE LIFE + ONE VOICE *        笑っていれば、イイコトあるよ  

今だからいえる話。 Ep.2

おさらい。
午後2時45分にブースに櫻井さん登場、軽く挨拶。の予定。
午後3時にブースで先着順にプレミア上映のチケットを配布。の予定。
午後4時から三池監督のみでコミコン会場内の劇場にてパネル。
午後8時半からDirector's Guild Theaterにてヤッターマンのプレミア上映。


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2月6日。金曜日。

朝起きる。

朝起きて、家からでもメールと電話は出来ることに気付き、
わざわざOfficeに出向くのをやめる。
しかし朝の9時に電話をして気付いたのは、
向こうはPhoenixにいるので、時差でNY時間の11時まで出社してこないということだった。

もうこの際しょうがないので、
他のEmailを返信しまくって時間を潰す。
途中で朝一から並んでいる香取さんから何度か連絡が入り、
すでに嵐ファンがわんさかである話を聞く。

暢気にその人気っぷりに感心してみたりする。

11時の電話が長引き、家を出たのは12時半。
そのままMeetingに行くことにし、
Mimiにも手伝ってもらうイベントなので、
顔合わせのつもりでそちらに合流してくれるよう頼む。

私が言っているのは、たくさん多くの可能性で、
櫻井さんのために使った$30無駄にしてもいい?
ということ。

彼女は優しいから、なんでもないことのようにYesという。

待てども暮らせども先方が姿を現さないので、
留守電にメッセージを残して近場で昼飯を探す。
食べ始めた頃にやってくる。
1時半のMeetingが始まったのは2時で、
終わったのは2時40分くらい。

ここから会場までタクシーで15分くらい。
それからチケットをバッジに交換しなければいけない。

私は歩きながらKFCのツイスターを食べ、
Mimiは歩きながらコーヒーを飲む。

なぜかまったくあせっていない二人。
タクシーのタの字も出なかった。
くだらない話をしながら会場へ歩く。
くだらないことが馬鹿みたいにおかしい。

櫻井さんに会えるかもしれない。

私たちはきっと、
その可能性があることが楽しくて、
実現性はもはやあまりどうでもよかった。

今までに一度だって本気で見たことのないその夢を
私たちは$30で買って、
そして正しくドキドキしている。

もはやミッションは達成されていたのです、きっと。

会場に着いたのは3時過ぎ。
並んでみたら実はそれは違う会場への列だったと気付き、たぶん5分くらいロスをする。
真剣なファンを馬鹿にしているかのようにたるんでいる私たち。
だけど楽しい。
櫻井さんがこの会場にいるらしい。
面白すぎる。

バッジはすぐに手に入り、会場内に入ったのはたぶん3時10分くらい。
とりあえずブースに行ってみる。
ところがしかし誰もいない。
奥行き4メートルx横幅9メートルのそのスペースで、
係りの日本人のおねいさんが数人の女の子の対応に追われている。
あまりのブースの小ささについ笑ってしまう。
櫻井さんがどこまでコンパクトに収まると思ったのか。

笑い事ではない。

Mimiちゃんに情報収集を託して、私はtomoさんに電話をする。

電話が繋がるのを待っている間、ふと見回してみると、
そのブースの斜め向かいに人だかりが出来ていて、
そのあちこちからうちわがはみ出している。
どうやらみんなが見ているのは、
二階のラジオブースみたいなガラス張りの一室。

tomoさんが電話に出て、「今タクシーで劇場のほうに向かってるよ!」とおっしゃる。

話を要約すると、
朝のそれはもう5時とかから並んでいたファンの皆さんは、
開場1時と同時にブースに集合、
前も後ろも分からないほどに膨れ上がっていく人ごみの中、
とてつもなく窮屈な思いをしながら1時間待ち、2時間待ったあたりで
櫻井さんは来ません。
と宣告され、
ではプレミアのチケットを配ります。
との宣言後、
およそ20枚が最前列のクレイジーファンに配布され、
終了です。
と叩き割られたらしい。

・・・少なくとも100枚くらいは配るような話を聞いていたのですけど?

まだ絶対に空席はあるに違いないから、
とりあえず劇場の前に並んで様子を見てみる。
とのこと。

今来た私たちのような無粋ファンはともかく、
朝からずっと待ってらした香取さんのことを考えると
理不尽にもほどがあるじゃないかと、
ブースの中から目配せをしているMimiちゃんをにらみつける。
八つ当たり。

「でも翔くんはまだ会場にいて、2階の窓から手を振ってくれるんだって」

さっきの人だかりを見やれば、
ラジオブースのドアが開くたびに歓声が上がっている。

とりあえずまた電話する、といって、
一度切る。
からかうように開閉するとびらと
そのたびに振られるうちわとを
まじまじと見つめてみる。

あの白いドアの向こうから、
あの櫻井さんが入ってきて、
あのガラスケースのなかから、
こちらの私たちに手を振ると。

なるほど。
興味深い。

Mimiちゃんを呼び寄せて話を聞いてみれば、
彼女の前にいた女の子はタイからこのために訪れていた子で、
朝からプレミアのチケットのためにずっと並び、
だけれどあの大群のなかで20枚に手は届かなかったのだと
涙ながらに日本語で語っていたらしい。

おねいさんはバイトさんで、
何もお答えできません
とのこと。

そのバイトのおねいさんに、
もう何度も何度も何度もお答えになってるでしょうけど、
プレミアチケットはもうないんですよね?
と聞いたところ、
もう配ってません
といわれた。
劇場で並んだら入れそうですかね?
と聞いたところ、
私には分かりません
と疲れ果てた声が返ってきた。

せめて心労に見合ったいいバイト代を稼いでいて欲しい。

Mimiにtomoさんからの情報を伝え、
とりあえず人ごみにまぎれてみる。
近くにいた子に声をかける。
New Yorkから来ている2人組。
同じく20枚に手が届かなかった2人。
周りを見渡せば、手が届かなかっただけの、
あまりにも多くのファンが、
ガラスの向こう、
白い扉の向こうを、
祈るように見上げていた。

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とびらが開いた後の話は こちら
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えーさて、
各方面に確認したところ。
You are my soul soulで、
耳に手を当てて聞こうとしていた櫻井さんは、
完全な妄想の産物であることが判明しました(苦笑)。
耳を澄ませていただけだったって!

ここに深くお詫び申し上げます(平伏)。

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おずおずと入室して、
階下に敷き詰められたファンの人数に文字通り目をまんまるにして、
まるで激しい動きをしたら猛獣が目覚めてしまうかのようにおしとやかに手を振り、
何かに気付いてブースを指差して誰かを見やって話をしている櫻井さんをみて、
Mimiちゃんと私は、
失礼千万にも大爆笑していた。

櫻井さんが、
そこにいる。

2人でひたすらにずっと笑っていた。
笑い続けた。

幸せ。

パチパチする。

予定としては、次で劇場に行って
ヤッターマンレビューして
質疑応答とその後で、
土曜日のパネル。

だけどレビューを書くべきか決めかねています。
単純にいえば私の好みではなかったんだけど。
だけど公開前だし。
何か助言があればお願いします。