ONE VOICE

     * ONE LOVE + ONE LIFE + ONE VOICE *        笑っていれば、イイコトあるよ  

Charity #1: Michael C. Hall: Pieces of You

やすこさんから頂きました。
参加して下さってありがとう。
そしていつも振った話題に乗ってくださってありがとう。

『デクスター』主演俳優さんのクソ上手さについて。

*いちおうこれで完結ですが、次回二宮論に向けての前半部分でもあります*
*もしよければ嵐ファンさんもどうぞ*

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私が思うに、
演技の上手さって
実は結構細かくカテゴリー分けできるものなのです。
だから例えばアカデミー賞とか、受賞するのは理解できても、
受賞できないことに納得がいかなかったり、
要するに、一番、とは指をさして明白にできない。

ある一定のラインを超えれば、みんな上手で、観る価値があって、
その芸術性に感動することはさほど難しくない。

だけれど、例えば私はSNのJensen Acklesが物凄くいい役者さんだということは、
身をもって知っているけれども、
彼は人間の層を描写する演技をする。
英語だとPeel(皮を剥く)というのですが、
JAは、すでに与えられたキャラクターを深く掘り下げていくことに非常に長けています。
普段はその人物が見せない、見せられない、奥に秘めた脆さや弱さや芯の強さを、
なんでもない瞬きのひとつで表現してみせる。
そういう風に生きている演技をする。

そんな芸術。

私の思う、Michael C. Hallの演技の凄いところは、
果ての見えない幅の広さにあります。
なんでも自然体に見える。

彼がしているのは表現でもなんでもなく、
ただDexterとして、
存在していること。

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前提に、Dexterという作品そのものが、
ひとつの芸術作品として、とてつもなく高いレベルにある、という事実はあります。
脚本の素晴らしさ
周りの演じ手の秀逸さ
演出の語り口の上手さ

これが1話1話映画でも、私は別に驚かない。
払うよお金。

正直、
Michael C. Hallの上手さが、Dexterとしてだけのものなのか、
そうでないのか、
私は知る術を持ちません。
彼がこれの前に出ていたSix Feet Underというドラマはとても評判が良くて、
私はすでに自分がいつかこのドラマを見て
とても深く感動して
大泣きすることを知っているのですが、
なんとなくタイミングがつかめず、未だ予定は白紙。

しかしそれを観なくとも、
衝動を持った人間が、
それを聞き入れて、
窮地に追い込まれて、
あたりを見回して、
そして自分の生まれ故郷を知る、
Dexterという人間はひとつの物語としてとても素敵で、
それを表現の仕様がないほど自然体で演じている彼は、
素晴らしい才能の持ち主なんだと、
ただその演技を鵜呑みするしかありません。

力という力をどこにも感じない。
他にどうしようもないくらい、あるがままなのです。
衝動も殺人も隠蔽もウソも、
Dexterにはこれが日常。

演技と、感じさせない。
演技力を、感じさせない。

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ディスクが終わって、
Ejectボタンにゆびを押し付けたときに、
ふとその凄まじい才能に、叫びだしたくなる。

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Nobody does scary like Michael C. Hall.
- 彼のような「怖さ」を演る俳優は他にいない。(09年GG ノミネートに際して)


正体の見えないものに対する恐怖
というのは、ホラー映画の定石で、
理解できないものに対する不安
というのは、社会的敬遠における基礎と、私は理解しています。

最近ようやく理解したのは、
Michael C. Hallは、「解析できない表情」を見せる。

だから怖い。

彼の演技は、
カラダの一部一部がそれぞれ違う感情を語るのです。
目は怒ってるけど、
口は笑っていて、
でも眉は落ち着き払っている、とか。

手は肉を刻んでいるけど、
脳みそは恋人に向かっていて、
口はうそをついているけど、
心はきちんと恋をしている、とか。

その全部を一時に提供されて、
じゃあDexterは今何を感じていたのかと言われても、
そんなことは分からない。

わからないから怖い。

だからDexterは間違いなく人間として何かを欠落してしまったのだと理解できるし、
この人は人殺しをやめないのだと、言われる前にもう分かる。

そういう内在的な戦慄。

だけれどそれは、私たちにDexterの感情が伝わってこないということとは、絶対に違う。
それが、Michael C. Hallの芸術。

自然に見せるその顔は、
例えば「喜び」とか「怒り」とか「嫉妬」とかラベルをつけて区分けできないもので、
だけれどそれは、Dexterも知らないこと。

彼はそもそも自分が
一般的に理解される名称のついた感情を持つなんてことが、
起こると思ってすらいない。

確かな感情に、気付かないでいること。
そういうふうに無垢であること。
そこには乱される未来のない心としての純真さがある。

解体されたままの感情を
バラバラのまま生きていく。
無理して理解にこだわらない、
すんなりとした演技。

決して全てが噛み合って進んでいかないところに、
Dexter Morganという人間の類まれなる魅力があり、
それを演じきるMichael C. Hallの才能がある。

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今年のGolden Globeで見事に主演男優賞を獲りましたが、
同時にホジキンリンパ腫と闘病していることも話題になりました。
Hodgkin's lymphomaというこの病気は、悪性リンパ腫の一種で、
統計的には白人さんに非常に多い病気のようです。
私と同じ生年月日の歌手Delta Goodremも罹った病気。
化学療法なども受けて、今は快方に向かっているとのことで、
授賞式でもみた分には非常に元気そうでした。

失うにはあまりにも惜しまれる俳優さんです。
体を大切に、無理しないでDexterを続けていってほしいと思っています。
Take care Michael.
You fascinate us.

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*今週中に上げたい二宮演技論に続く*

とりあえずパチる。Dexter観る。