ONE VOICE

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魔王 Ep.9-11 総括

魔王スタッフの皆様、お疲れ様でした。
なんだかんだ言って、毎週楽しみにしていました。
楽しい時間をありがとう。
そして素敵な大野智さんを見せてくださって本当にありがとう。

さて、先に、魔王という作品全体にについて私の思うところを書きます。
私がやれといわれてもできないモノゴトをスタッフの皆さんが総力をあげて作り上げたことは分かってますので、請う、ご容赦。

私が7話目くらいから、目に見えて不満タラタラだったのはご存知の方も多いと思いますが、私は常に全然面白くない! と思っていたわけではありません。何度も言いますが、もったいない、と思い続けておりました。魔王というドラマは、1話目から、常に続きが気になるドラマでした。次はどうなるのだろう? 皆どうするのだろう? 芹沢と成瀬はどうなってしまうのだろう? という疑問は、常にそこにあった。にもかかわらず、同時にこんなにもつまらなかったのは、その疑問に変化が生まれず、大きいたった一つの疑問を持ち続けたまま、魔王は最終回を迎えてしまったから。物凄く面白くなる素質をもった題材だと思っていたので、単調で展開の遅い復讐劇で終わってしまったのが、私は何よりもがっかりでした。

私たちはそれこそ第一話が始まる前から、成瀬が犯人であることを知っていて、第一話で彼の目的が何で、その計画はどうで、いかに彼が捕まらなさそうかということも教えてもらいました。これだけのインフォメーションを差し出してしまうことはサスペンスとしては、結構な賭けのはずで、私の個人的な意見としては、魔王は、自分でつけたそのハンデに見合うだけの働きができなかったのだ、と思っています。

キチガイのメガネ君が登場するあたり、そしてクマ(そんな役名じゃなかったけど)が死んでしまうあたりまでは、魔王は面白かった。それはなぜなら、登場人物が驚くように、私たちは驚くことができたし、私たちの知らない新しい情報が思いもよらないところから出てくる、というワクワク感を楽しむことができたからです。暗雲が立ち込め始めたのは、イケハタが出てきたあたり。彼の人物造形が、あまりにも「気味が悪いだろう、怖いだろう、何が起こるかわからないだろう」といわれているようで、かえってとても白けてしまった。人殺しをしている人を捕まえて、カネのために強請る人間が、怖い、ということは私にとってはまずなくて、あんな馬鹿で一本調子の人間に魔王が捕まるはずがないので、そこでまずちょっと落胆。それから大隈という都合の良すぎる人物の都合の良すぎる登場と退場にも、なんだかなーという気分が否めなかった。そして一リポーターが掴めるネタを、警察(芹沢)がまったく掴めていない所で失望。魔王の最大の問題は、物語の中での情報提供のバランスが悪すぎるところです。

肝心の物語中盤から後半にかけて、あぁバレちゃう、どうしよう、どうしようというドキドキは、あんたたち、まだ分かんないの? いい加減気づけよ! というイライラに変わってしまった。それはなぜなら、見ている私たちにとって、話がちっとも進まないからです。登場人物の皆さんが、視聴者にはるかに後れを取っていて、しかも全く追いついてくる気配がない。その上魔王は、しおりさんというよく分からない女性に惑わされて、仕事がちっとも進まない。

一番いい例が、エロメガネくんのストーリーライン。
私たちは、彼が芹沢兄の奥さんと不倫関係にあることを、1話のそれはもう始まった直後あたりからずぅーーーーーーーーっと知っていました。宗田がそれを知って衝撃を受けているとき、私は、安堵のため息を漏らしながら、「あぁやっと気づいてくれた!」と思ったわけです。待ちくたびれた。例えば、1話から暫くは彼が年上女性とそういう関係にあることだけ描写しておいて、彼女が一体誰なのかは、あえて描かないようにして、そうして、宗田と同じタイミングで、彼女が実は芹沢兄の奥さんだったんだと視聴者が知ればよかったとか思う。そうして一緒に衝撃を受けられたらよかった。そしたらきっと、そのシーンにあって然るべきドキドキが生まれたはずです。宗田が殺されたときに、未だに何も知らない芹沢が、マリさんに電話をかけるシーンがあったけれども、私は、芹沢はそこでなにかに感づいても良かったんじゃないかと思っている。「葛西くんはそんなことをするような人じゃないわ」みたいなコトを彼女が言った時、確信ではなくても、少なくとも何かを匂わせるために「貴女なら良くご存知でしょうね」と言い捨てて、電話を切ってほしかった。私たちは、それこそ3ヶ月のあいだ、この二人の正直別にどうでもいい裏痴話事情を見させ続けられていて、それがついに日の目を見そうだ! というときに、そんなにノロノロされていたら、忍耐も限界です。視聴者が知りすぎている事実なら、登場人物がちょっとばかし勘がよすぎてそれに気づいても、少しくらいならむしろその進展は歓迎されると思うのだけど。

ということを踏まえて、魔王の9話と10話は、まるで話の進まなかった2話でした。
成瀬が犯人だ、ということにようやっと気づいてくれたにもかかわらず、どうも新しいネタは出てこない。なぜ、視聴者は芹沢父が成瀬さんに話す前に、あの事件が単なる事故だということを教えられてしまったのでしょう? 成瀬さんと一緒にその事実を知って、愕然としたかったよ。そうして、いまさらそんなこといわれても困るんだよ! と、成瀬さんと一緒に困惑して憤慨して、動揺したかった。目の醒めるようなスタートダッシュの後に、ストーリーの運びが、私にはどうにもトロ過ぎたのだと思います。せっかくのいいカードを、早い段階から惜しみなく出しすぎたと思う。おかげで最後のほうは、最終回までの待機時間が3時間くらいありました。長かった。魔王のEp.1のレビューに書きましたが、「最大の不安はプロットにあります。Mimiちゃんとも話していたのですが、現時点では要素的に映画の長さにまとめてしまえるくらいのネタしかないように見えるわけです。10話も持つのかな? これから一話につきひとりずつ殺されていって、どちらかにしか転べない最終話に繋がるだけなら、それほどつまらないことはない、とすでに不安。第一話と最終話だけ見ればいいような話になってしまいそうで怖いわけです。物事があまりにも調子良く進みすぎてしまっていっているけれども、こういう話は駆け引きが始まってからが面白いので、来週かせめて再来週あたりには波乱が起きて欲しい。リーダーには復讐を円満に果たさせてあげたいんだけど、物語としてはそれではあんまし面白くないと思うんだよな~。」という危惧が、現実になってしまった気がする。結局は駆け引きの欠片も出現せず、どちらかにしか転べない最終回にたどり着いてしまった。もう一度このドラマを見るのなら、私は最初と最後を見るだけだと思う。というか、最初と最後さえ見ればいい。それがなんとも寂しいです。

最後に、ストーリー展開は別にして演出の件です。最終回のことばかりです。
こうだったら良かったのに、というか、噛み砕いて言えば、「こうだったらもっと萌えられたのに!」という、何とも独りよがりのわがまま。演出さえうまくできたら、もっと心に残るシーンはたくさんあったはずだと思っているのです。あとは気になった重箱のスミ。
たくさんありすぎるので、ズルをして箇条書きにします。

- 最終回は芹沢の上司から、芹沢の兄から、皆喋るのがびっくりするくらい遅くて、私は画面の中に飛び込んで、一人一人の肩を揺さぶって、さっさと喋れよ! と叱ってやりたかったです。「芹沢は・・・11年前から・・・ずっと・・・苦しんで・・・貴方と・・・貴方と・・・同じ・・・なんです」みたいな。トロい! 感情を訴える間っていうのは、そうそう乱用されていいものじゃありません。アメリカのドラマの、クライマックスに向けて疾走が始まるあの高揚と興奮に飼い馴らされてしまったのか、どうにもこうにも歯がゆくてなりませんでした。もっとリズムよく行こうよ、リズムよく。最後なんだからさ。

- 以下、不謹慎で済みませんリスト。
- お父さんが病院廊下を駆けている描写。お父さんの走り方がどうにも滑稽で笑ってしまいました(スイマセン)。なぜあのカットが必要だったのかが全然わからない。いいじゃん、例えば霊安室の中で、カメラの背後に遺体がある感じで、頑迷蒼白でイスに座る芹沢にフォーカス。その後ろに扉。扉になにかがどーんとぶつかって、フォーカスがドアに映ると、動転してヨロヨロしているお父さんが入ってくる。完全に息切れ。それくらいじゃダメなのかしら?
- 芹沢兄の死に顔がいやに薄笑い気味で、どうにもおかしかった(スミマセン・・・)。
- 芹沢兄の遺言書の文字が、どうにもお粗末でついつい笑ってしまった(スミマセン・・・)。
- なんだかどうにも、「お前たち二人は私の息子だからな」が腑に落ちない。なんていうか・・・うーん・・・いや、わかんない。でもなんか、ちょっと都合がいいような気がする。
- 壁に縋って泣く芹沢は乙女チックだった(ホントにスミマセン・・・)。

- 「上を見上げてみてください」に応える成瀬さんは、目を瞑って上を見上げてみて欲しかった。どれだけ上を見ても、彼に見えるものは暗闇。・・・でもリーダーが素敵だったからいいや(笑)。あの表情には万感、という言葉が非常に適切だったと思っています。

- 誰かこのバカ女に、出ていこうとしている家は死んでしまってもうなくなってしまったのだと、教えてやってくださいよ。

- キチガイメガネに刺されて、ベンチに座っているとき、電話がかかってきて「成瀬です」と応えた成瀬さん。知ってます。ケータイですから。そこは「はい」でよかったんでは? (笑)

- 成瀬さんからの手紙。ここら辺非常に韓国。何よりも大野智の声がいい(笑)。しかし結局、「どうしても死ななければならない」発言を考えると彼女は間中友雄を救えなかったわけで、さらに全ての人間が死んでしまったことを考えると、魔王計画におけるしおりさん効果も全くなかったことになるわけで、結局彼女は何をしに出てきたんだ?(苦笑)

- 走り出すしおりさん。彼女はランダムに人探しをしているわけではなくて、あの廃墟に行きたいわけでしょう? ・・・タクシーのほうが早いんじゃないかな(笑)。

- この回でなによりも衝撃的だった出来事は、キチガイメガネが警察に射殺されたことです。ナニその突拍子もない脈略のない終焉。

- 上司から芹沢父の死を聞いて、へたり込む女刑事。いや、別にアンタがそんなに凹むことはないんでは?

- 血まみれスーツのボタンを止め直す成瀬さん。かわいい。そのしぐさが、何だかいじらしい。だけど、その後に見せる魔王と間中が半々になったような表情が秀逸でした。

- 廃墟で背中を見せて立っていた斗真くんの立ち姿が、いかにも舞台俳優さんで、ちょっと微笑ましかったです。

- 芹沢は周りの人間が死んでいくことに、苦しんでばかりでした。罪悪感ばっかり。純粋な怒りに変わることが、私の目にはシリーズを通して一度もなかった気がします。それが、私はとてもつまらなかった。父親が死んでから、成瀬と正対するまで、走らず、静かに歩を進めてあの場所に向かう芹沢は、確かに激情に駆られていたけれど、成瀬さんが来てくれたと思えば、開口一番「俺のせいで」。それはクライマックスに向けてのスタート地点として時間的にあまりにも遅すぎるだけでなく、感情の起伏としてもあまりにもお粗末で、怒りが消滅してしまうまでが早すぎた。もう少し彼の怒りとか、決意とかきちんと表現されて、そして長続きしてくれたらよかったのにと思う。もちろん芹沢が成瀬さんを撃つとは思っていなかったけれども、「え、やっぱり撃っちゃうの?」という気分にはさせられたかった。せめて拳銃を出したときはハナから両手で構えてくれないと。あんなに簡単に崩れられてしまうのも興醒めだ。感情の持続しない男、芹沢。それはクライマックスを盛り上げるにおいて、ちょっと弱すぎる手駒です。成瀬さんの「早く殺せ!」までは、確実に怒り狂っていて、殺してやろうと思っている芹沢でいてよかったと思うんだよね。ただ、引き金を引くに及べないだけで。だけどその言葉で我に返って、「アンタの目的はこれだったのか」となれば別に良かったんじゃないの?

- 「罪を犯した俺に」・・・要するにアレが事故だったという事実は、もはやどうでもいいのね?(苦笑)

- 芹沢と正対して、泣き出してしまった成瀬さん。できたら「貴方はまだ分からないんですか」ではなく「これで全部終わる」のときに泣き始めて欲しかった。そしてそのセリフは正面で撮ってほしかったぞ。あれじゃ表情が見えないよ。それから、成瀬さんを撮ってるカメラさん、一緒に泣いちゃったんでしょうか? ちょっとカメラが動きすぎじゃない?

- 物陰からハンディーで二人をキャプチャーしているカットがいくつか挿入されていたけれど、あれは普通は誰かが覗き見していることを匂わせるために使うカメラワークだと思うので、別にそんな小細工働かなくても良かったんじゃ、とか思ってしまった。せめてステディーで撮ったらよかったんでは。

- 贔屓目でも何でもなく、感情が爆発している大野智は芸術的です。つい見ちゃう。何が凄いのか分からないけれど、ただ凄いなぁと思う。

- 芹沢が死んだ後のシーン。芹沢に成瀬さんが謝るシーン。二人並んで座っていたあのシーン。まるでテディーベアのように! ナンですかアレは! 滑稽です。滑稽以外のなにものでもないよ!(怒) 何度見ても笑ってしまう。あの演出を考え付いた人を、酒に招いて、一体何が表現したかったのかをしこたま語ってもらわないと気がすまない。おかしいだろアレ! ありえないでしょ、あんなん。死んだ芹沢を、わざわざ起こして、あんな直角に座らせている成瀬さんを想像すると、ワケが分からない。一体何のシュミですか。Seriously. 芹沢の亡骸と成瀬さんはお互いに添い寝するように横になってもらって、成瀬さんは天井を見上げたまま「許してくれ」と呟けばよかった。・・・しかし斗真くんの肩に頭を預けているリーダーはかわいかった(笑)。

- 最後、芹沢の手がハーモニカを握っているのを描写するカメラワークにだまされて、まさか成瀬さん、芹沢の手を握ってるんじゃ! と思ったのは、私だけではないはずだ(笑)。・・・というか、ハーモニカがここにあるってことは、しおりさんに渡したのは、あの箱だけ? それはまた・・・ナゼ。Somewhere Over the Rainbowだからですか? それだけですか?

- 長くなりました。一番最後の砂浜のシーン。・・・アレはナンだ? あの突拍子もないテンションは、役者さんも監督さんも、このシーンをどうしたらいいのかよく分かってないからだと思うんですけど。何がおかしいって、あの蝶々だよね? いやー、芹沢と成瀬が蝶々っていうのは、流石にないんじゃないか? もうちょっと他に・・・もうちょっと他にマシなのがあったはずだ。

以上です。
お疲れ様でした。

流星の絆はどこまでハマれるか分からないので不安ですが、楽しみにしています。


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