ONE VOICE

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始めから失われた

今日は先生の都合でスポーツ心理のクラスがお休みです。(これを書き出したのは木曜日でした・・・)
さて、ここ暫く日記に登場していなかったAndy Roddickにエントリーひとつを費やしたいと思います。

3日ほど前にPacific Life Open3回戦でベルダスコと対戦した試合を一部見たんですが、その時に久しぶりに綺麗なフォアでインサイドアウトのウィナーを決めるのを何度も見て、ようやく光を見つけたのではなかろうかとささやかな期待を抱いていたのです。ベルダスコとは過去3回くらい対戦していて、そのたびにいわくつきの苦しい勝利か苦い敗戦かを味わっていたので、とてもクリーンなスコアで突破できたことは、ベルダスコの調子がよくなかったことを差し引いても、喜びとささやかな楽観に繋がってよかったと思うんですね。

Andyを2003年からその後ずっと見てきたファンの間では、ようやくあのフォアが戻ってきた! という声もありましたが、次のアンドレーフ戦で結果が出せれば本物だろう、という慎重意見が大多数でした。

私は基本的にバックハンドダウンザラインよりもインサイドアウトフォアのウィナーに気持ちを晴らされるタイプで、特にAndyの豪快なストロークが好きです。だからこそAndyにはまり、果てにはテニスそのものに恋をし、そしてスポーツ全般にのめりこむようになったのです。アンドレーフ戦は一セット目と二セット目の初めのほうしか見られなかったので、何がどうして46, 75(5), 61なんてスコアになったのかが分かりません。とりあえず見た部分での感想をまず書きます。

最初にブレイクされたところを見ていないのですが、全体的にIgorがとても上手くプレイしているような印象を受けました。Andyは単発でよいショットを打つこともありましたが、力みすぎて素人目からしても早すぎる高すぎる打点でウィナーにいって、ネットにかけることが非常に多かったように思います。"Hit the damn forehand!"と叫んでいたのも記憶に残っています。大抵はとても理にかなったプレイで、彼の言葉を借りるなら"it was a right play"だったのですが、それを下手なストロークでぶち壊しにしていて、今日のアンドレーフのレベルと相まって、No3らしからぬ敗戦に繋がったのだと思います。

http://www.andyroddick.com/interview-pacific-life-open-31606/
このインタビューを読んだのは今日なのですが、読んだ直後の感想としては、今までで一番Andy Roddickという人間そのものがむき出しになったインタビューという気がしました。自分にとにかくむかついている、自分が何をしたのかがまるで分からない、という言葉が何度も繰り返されていて、そんなに焦らなくてもいいんだよと、声を掛けてあげたい気分です。しかし暫くよく考えてみると、これはそろそろ浮上の兆しがあるんじゃないかとも思われました。なぜかというと、最終的にこの全ての『早期』敗退の原因がだんだんメンタル的なもので、それ以上でもそれ以下でもないということに、本人も回りもだんだん気付き始めているからです。インタビューで殆ど誰も技術的なことには触れていません。なぜなら技術は落ちてもいないし、新しい戦術をトライしているわけでもありません。誰もがみんな、彼の今日の敗因は決めるべきところで決められなかったこと、正しいプレイをし、正しいボールの選択をしているのに、最後の最後でScrew upしてしまったことだと分かっているからです。

私は技術に関してはまったくの素人なので、あまりあれこれ言えた立場ではないのですが、決め球になってとたんに硬くなるストロークにさすがに気づくようになりました。お前それは無理だろうという角度で無理やり押し込もうとして、結局ネットに押し込んでしまうというオチ。これはプレッシャー以外の何物でもないと思うんです。そしてインタビューを読むと分かるのが自分にかけているプレッシャーが物凄くきついということ。私が受ける印象としては「自分にはこれができるはずだ」「自分にはこの試合、勝てるはずだ」という一種の思い込みに苛まされて、「これを決めないと」「このポイントは勝たないと」というプレッシャーに自滅しているAndy Roddickなのです。

一年半ほど前に「背中」というタイトルで2004 USO QFのヨアキム・ヨハンソン戦後の感想を載せました(と思ったら入ってないよここに! 吃驚。どこに行ってしまったんだろう。PCにはいっているのであとでアップします)。その時、あっという間に勝ってしまったスラムのタイトルのおかげで、実は発展途上であったコトを忘れられてしまったんじゃないかと書きました。そしてこのヨハンソンへの敗戦のおかげで、そのことを思い出して、そしてAndyはボレーやバックハンドの上達に努力を費やし始めたのだと思います。しかしUSOチャンピオンということでかかるプレッシャーと、そのタイトルのおかげで跳ね上がったクリアできて当然だと思われているハードルたちの亡霊に、彼は未だに悩まされているように思います。そして自分の中にも設定された「自分にはこれができるはず」という無意識のエゴみたいなものが、まだ捨て切れていないんじゃないかと思うんですよね。

2004年のUSOインタで、Andyは
right now I don't feel great. But if I felt great, then something would be wrong.
と言っていましたが、今回のインタでも同じコトをいっています。確かに痛い敗戦のあとに気分よくコートを降りられても困りますが、そろそろひとつの敗戦はただの敗戦と同じように受け止めて、もともと初めからなかった変なプライドも取ったでかいタイトルも忘れて、身一つAndy Roddickで挑んでみても良いのではないかなと思います。

がんばれAndy
Constant Aggression