ONE VOICE

     * ONE LOVE + ONE LIFE + ONE VOICE *        笑っていれば、イイコトあるよ  

今だからいえる話。 Ep.4

随分前の話をまだ引きずっています。
櫻井さんがNYにいらした時のお話をしています。
以下、関連記事。 ↓


櫻井 翔
Ep.1
Ep.2
Ep.3
ヤッターマン Review

*******

一つだったはずの列は気付けば2列。
寒かった風はさらに寒くなって、
曇っていた空はとっくに暗くなってしまった。
8時。

もうじっと立っているのもしんどい。
隣でMimiちゃんがバイブレートしている。
2人で抱き合ったりしてみる。
ここでみんなでおしくらまんじゅうをしてみたら、
きっと嵐さんみたいにほっこりするんじゃなかろうか。

一緒にならんでいたtomoさんの娘さんのご友人たちのなかに、
Tシャツの上にパーカーを羽織っただけの子がいる。
「さむくないの」
と声をかければ「だいじょうぶです」と答える。
毅然と張られた胸のTシャツが黄色だ。
「それ、24時間の?」
と聞くと、「そうですよ!」といって、前をさらにはだけて見せてくれる。
寒くてこっちが見ていられない。
誰がすきなのか聞けば相葉さんだと答える。
素晴らしい。
しかし母親には理解してもらえないのだと嘆く彼女が健気でかわいい。

隣の列には朝のブースでチケット争奪を生き抜いた人が並んでいる。
たまたますぐ側にいたのは韓国人と思しき4人組で、
だけどたまにとても流暢な英語になる。
韓英のバイリンガルさんとめぐり合わせたことがなかったので、
面白くなって耳を済ませてみる。
いつか韓国語が喋れるようになってみたい。

とりあえず寒い。
そして疲れた。
気付けばもう8時半を過ぎていて、櫻井さんはだいぶ遅刻している。
Mimiちゃんと小声で、入れなかった時に飲みに行く酒の候補をあげたりする。
ワインがいいような気がしている。
でもお金がないので、いつもの居酒屋さんでもいいかも知れない。
そうして車がまた一台通り過ぎる。
・・・はやく来い櫻井。

突然、
列の後ろのほうから歓声が上がって、
道路に目を見やればリムジンの中に櫻井さんが乗っていた。
横滑りで通過していく。
私たちの存在そもそもにびっくりしてしまった彼は
何かの間違いのように丸い目をしていた。
・・・。
かわいすぎる。

リッチに敷かれた赤絨毯を歩いているらしい櫻井さんを追って、
列を仕切っていた柵が地震のように揺れ始めれば、
周りの皆さまは津波のように、しかし隊列はそのままに前方に打ち寄せる。
マナーは良い。のだと思う。
というかもはやよく分からない。

振られるバナーとうちわの激しさと、
限りない絶叫と闇雲な熱狂振りに、
完全に飲み込まれてしまった私とMimiちゃん。
顔を見合わせて困ったように笑う。
見えないものに興奮しろと言われても困る。

まず最初に何かの抽選で当たった皆さんが優先で会場に入っていく。
それからお隣の列の皆さんが徐々に誘導される。
セキュリティーが列を腕でさえぎるたびに、
さえぎられた人が目を見開いて扉の向こうに消えていく前の人の背中を見ている。
一度さえぎられたのが10歳くらいの子供だった時があって、
なんかもう忍びなくて「誰かのひざに座らせてあげてよ」と無茶を叫んだりしてみた。
しかしセキュリティーさんもだいぶ混乱していてそれどころではない。

一列目がきれいに扉の向こうに消えた時に
「これでおしまい」
と宣告される。

私とMimiちゃんは二列目の前から4グループ目くらいにいて、
人数にすると大体10から15番目くらい。
あぁ。惜しかったね。とMimiと目を交わして笑う。
「さー飲むぞ!」

間違っても、
ここでがっかりしたりできない私たち。

嵐ファン人生の中で、一番幸せな一日。

ガラスの向こうで息をしていた櫻井さんを肴に飲む。
なんて乙。

しかし先頭が粘る。
しかも粘っていたら扉がまた開いた。
そんなことってあるのか、とビックリ仰天してみる。
「5人」と言われて最初の5人が扉の向こうに消える。
まだセキュリティーさんがインカムで何かをやり取りしている。
何かが起こりそうな気配に、固唾を呑む私達。
次のグループがtomoさんのお子さんたちで、
彼女たちは5人ひしめき合って息を潜めている。

セキュリティーのおじさんがインカムに頷いて、
機械的に一言。

「4人」

Oh, you gotta be shitting me.

中学2年生が、
アメリカまでやってきたアイドルのために、
この寒さの中を耐えしのいで、
待って、
待ち続けて、
突きつける選択がそれなの?

そしたら。

言うのですよ。
あの24時間Tシャツの子が。
「行っておいでよ」
そうして彼女は他の4人を扉に向かって押しやってみたりする。
「やだよそんなの」
と他の子たちがムキになって言い返す。
とても小さな、いっぱしの嵐ファンの彼女たちは、
押し合いへしあいして、
一生に一度のこの機会を譲り合うのです。

「早くしないと閉めますよ」
と腹わたが煮っころがっちゃうようなことをセキュリティーさんが言い始める。
「もうジャンケンしちゃいなよ」
と横から口を出しながら、
私はなんだか胸がいっぱいで
ちょっと恥を忍んで泣くかと思った。

たとえご両親に理解されなくても、
彼女たちは嵐を愛でて、
あたたかさを愛して、
素敵な人間に成長していくのです。

大げさだけど、なんて素敵なことだろうと思った。

「はい、時間切れ、コレでおしまい」
と言われて
(セキュリティーさんが悪いわけではないのだけど)
私はたぶん、Are you serious about this? とつい言っちゃったような気がする。

アリかよそんなの、と暫くみんなでボーゼン。

したらその10秒後に、
「5人入れてあげるから急いで!」
と言い出すのです。その人。
どんだけ混乱してんだよあんたら。という気分ですが、ここは反論したりしない。
良かった。
とにかく良かった。

仲良くみんなで扉の向こう側に消えていく彼らは、
セキュリティーの皆さんにもThank you。という言葉を忘れない。
Tomoさん、あの子達は、とても素敵に成長すると思う。

満足してしまった私は、
子供を見送ったはいいけど、取り残されてしまったtomoさんと、彼女のお母さん友達に向かって、
「ドコに飲みにいきましょうか!」と完全に空気を読めてない質問をかます。

・・・なんか酒のことしか考えていない自分が思い返していてとても嫌。

さっさと列をはみ出して、街に歩き出そうとする、
今思い返すとあきらめの良すぎる、異色な私とMimiちゃん。
そしたら再びセキュリティーさんがやってきて、
「待って待って、列に戻って!」と叫ぶ。
なんだか彼の振り回されようが、もう気の毒。
元の列に戻ってみたら、tomoさんとご友人が先頭で、さっそく、
「とりあえず二人入って」
と促される。
驚いてなぜかこっちを見やるtomoさんに、慌てて「またあとでね!」とか適当なことを言ってみる。
気がつけば櫻井さんが消えて行ったらしいレッドカーペットと扉がやけに近い。

震えそうなくらい近い。

インターカムに話しているセキュリティーさんが、「Nine?Nine?Nine, right?」と繰り返している。
Okay, I just sent two in. と最後に言って交信を絶つと、
「あと7人。これで今度こそ本当に最後!」 と叫ぶ。

How many of you?
Two.
Okay, go in. No running!

中に入るなりいきなり、日本語で
「急いでください、急いで!」
と言われる。
そのおねいさんについていく。
思っていたより格段広い。
もうちょっとぎゅうぎゅうになっているのかと思っていたのです。
空席があったとかいうわけではないけれども、
本気になれば立ち見席を作ることなんてワケ無いだけの広さがあった。

案内してくれるおねいさんがずんずか前に進んでいく。
どこまで行くんだと思っていたら、
まずMimiに向かって座るように指し示した席が、
ど真ん中よりちょっとだけ右よりの、前から4番目。
Are you kidding?
おとなしく従うMimiを残してそのまま連れて行かれる私。
どこまで前に行くのかと思っていたら一番前まで行ってしまったよ。
そこで彼女はクルッと回って、舞台に向かって一番右側の空席を指差す。
THAT's my seat?!
ありえないし。ホントに。

のこのこ歩いていったら、そのすぐ後ろの席がなんとtomoさんとご友人。

私を見たら物凄い喜んでくれて、
それから、Mimiちゃんは? Mimiちゃんは? と聞いてくれる。
あの子はあっちですよ。と指差してみんなで手をぶんぶん振り合う。
意味もなく握手を交わして、
お互いの肩を抱き合ったりしてみました。

あったかい。
そして椅子がある。

そしてもうすぐ櫻井さんがすぐそこに出てくるんですってよ。

パチパチする

次回で終われる予定であります。
もうちょびっとだけお付き合い下さいませ。