ONE VOICE

     * ONE LOVE + ONE LIFE + ONE VOICE *        笑っていれば、イイコトあるよ  

s n o w

12月6日。
2008年。
土曜日。
夜9時。
NY。

マンハッタン行きの電車。
寂しくない程度の体温を乗せて走る。
座ろうと思えばいくらでも座れる。
泣こうと思えばいくらでも泣ける。
だけれど私はドアに寄りかかって目を閉じる。
このままでいいのだと思いたい。
思っていたい。

ドアは一瞬躊躇して開き
私は少し考えてから外に出る。
このまま乗っていたら
どこまで逃げていけるのだろう?

階段を上がるととても細やかに雪が降っていて
なんだか私はそこで忽然と消えた。
どれだけ雪が照明を反射しても
空はどこまでも
どこまでもあまりに暗すぎる。

上から下に落ちる。
風に振り回されて飛ぶ。
そこに確かな動きなど何一つなく、意思も夢も感じられない。
分かっているのは、いつかは溶けて無くなってしまうのだと言うこと。
どれだけの雪が降っても覆いきれない夜のNYの空は絶望的に広く、
消え失せてしまった私は動けなくて
その空の下で鼓動を早める痛みに、目を閉じて息を深く吸う。
寂しいと呟いてみても違う。
瞼の熱さも、舌の上に感じる味も
寂しいなどより遥かに孤独。

車の走る音
遠くの救急車
ヒール
革靴
ホームレスの引きずるカートの音
どれも違う。
どうしても違う。

地下鉄の揺れ方
星の輝き方
風の動き方
雪の降り方
どれも違う。
どれもこれも違う。

バベルの塔が崩れ落ちて引かれた境界線は
きっと私の身体の形をしている。
私の中にしか存在し得ない
願いと響きと何か。

抵抗もなく乱舞される雪を見て
同じように寂しくならない私ではない何億人もの人に囲まれて
この世に一人しかいない私は
今とても独りになった。

I'm On Your Side - Maria Mena

パチパチする